ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法とは
A型ボツリヌス毒素を膀胱の排尿筋に注射することで筋弛緩作用を有し、過活動膀胱による様々な症状を改善する治療法です。
行動療法や飲み薬・貼り薬で十分な効果が得られない場合、または副作用などの理由で治療継続が難しい場合に行います。
この薬は、過活動膀胱、神経因性膀胱をはじめ、さまざまな疾患の治療薬として世界90か国以上で認可されています。
症状でお困りの方は我慢せずに、ご相談ください。
2020年より保険適応となりました
過活動膀胱について
過活動膀胱とは
過活動膀胱とは、急に尿意をもよおして、何回もトイレに行ったり、トイレに間に合わず尿をもらしてしまったりする病気のことをいいます。
また、行動療法や薬物治療を少なくとも12週間継続しても改善がみられない、または副作用などで治療の継続が困難である場合を、難治性過活動膀胱と定義しています。
過活動膀胱が発症するしくみ
過活動膀胱になると、尿が十分にたまらないうちに膀胱の筋肉が勝手に収縮して、尿を出そうとします。過活動膀胱が発症するしくみは十分にはわかっていませんが、加齢、肥満、メタボリック症候群、高血圧、前立腺肥大症など、さまざまな病気が関係していると考えられています。
過活動膀胱でよくみられる症状
過活動膀胱の症状は、尿意切迫感、切迫性尿失禁、昼間頻尿、夜間頻尿の4つが一般的です。
尿意切迫感
突然起こる、がまんできないような強い尿意
切迫性尿失禁
がまんができずに尿がもれてしまう
昼間頻尿
日中に何回もトイレに行く
夜間頻尿
尿意のために少なくとも1回は睡眠が中断される
神経因性膀胱について
神経因性膀胱とは
神経因性膀胱とは、神経系の病気によって尿のトラブルを生じる病気のことです。神経因性膀胱になると、本人の意思とは関係なく、尿がもれたり、逆に出にくくなったりします。
神経因性膀胱が発症するしくみ
脳や脊髄の病気により、神経が障害されると、脳からの信号が膀胱へうまく伝わらなくなることがあります。その結果、尿を出したり、がまんしたりする膀胱のはたらきがコントロールできなくなり、神経因性膀胱を発症します。
原因となる疾患
神経因性膀胱の原因として、以下の疾患が考えられます。
脳障害
- 脳卒中
- パーキンソン病 など
脊髄障害
- 脊髄損傷
- 多発性硬化症
- 二分脊椎 など
ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法の効果
効果は通常、治療後2~3日であらわれ、過活動膀胱では4~8ヵ月、神経因性膀胱では8~11ヵ月にわたって持続します(効果の程度や持続期間には個人差があります)。
効果がなくなってきたら、あらためて治療が必要となる対症療法です。再投与の時期についてはご相談ください。
ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法の治療法
ボツリヌス療法の作用と治療法
- 過活動膀胱、神経因性膀胱は、膀胱の筋肉が異常な収縮を生じることで起こります。
- ボツリヌス療法は、膀胱の筋肉をゆるめ、異常な収縮をおさえる作用があります。治療には膀胱鏡を使用し、異常な収縮が生じている膀胱の筋肉に、20~30ヵ所、直接薬を注射します。
- 注射は10~20分ほどで終了します。当院は外来にて治療を行っています。
注射による痛みを緩和するために局所麻酔を使用しています。治療後、排尿を確認できしだい、すぐに帰宅可能です。不明点があれば、ご相談ください。
ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法の副作用
過活動膀胱、神経因性膀胱の治療でみられるのは、主に次のような症状です。これらの症状がみられた場合はすぐにご相談ください。
尿路感染
尿の出口から細菌が膀胱内に侵入することで生じます。尿路感染により炎症が生じると、尿の濁り、頻尿、排尿痛、発熱、悪寒、血尿などの症状がみられることがあります。
残尿の増加
尿を全部出しきれず、膀胱内に尿がたまってしまう副作用です。投与後は2週間以内に残尿量を測定し、その後は必要に応じて残尿量測定を定期的に行います。残尿量がある程度多くなった場合は、改善してくるまで自己導尿を行う場合があります。
不明な点はご相談いただき、十分に理解してからボツリヌス療法を受けましょう。
尿閉
尿をほとんど、またはまったく排出できなくなる副作用です。尿が出づらい、尿に勢いがないといった症状がみられます。まれに痛みや残尿感を伴う場合もあります。